タンクローリィ組合、20%の賃上げを獲得
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1979年1月、TGWU(運送業労組)はBP(英国石油)やEssoのガソリンを運ぶタンクローリィ運転手にストを指令し、イギリス全土のガソリンスタンドを休止に追い込んだ。
市中のガソリンが無くなるのを待った上で、URTU(イギリス陸運業労組)もストを始め、イギリス全土の陸運の80%をストップさせた。
このストの影響で、100万人以上の労働者が、一時帰休に追い込まれ、工場生産が止まった。
TGWUは最低限必要な物資の運搬を確保するよう政府から申し入れを受けていたが、家畜の餌などが運搬されなかったため、家畜を処分せざるを得ない農家も現れた。
そのため、農家はTGWUのやり方に抗議して、豚や鶏の死骸をTGWUの事務所前にぶちまけた。
このタンクローリィ運転手のストは結局、1月29日、20%の賃上げ仲裁案を労使双方が受け入れる形で終結した。
こうして多くの民間企業の労働者達が、ストで10%を越える賃上げを獲得し始め、政府もそれを容認するような態度を取ったため、公務員や公共セクターの労働者達も黙っていなかった。
機関士&消防士組合(ASLEF)や、鉄道労働者組合は24時間ストを始めた。
また王立看護大学の会議は、看護師の給料を25%引き上げを求めることを決めてストを準備した。
そして1月22日を「行動の日」とし、24時間ストと、週給60ポンド以上の保証を要求するデモ行進を行った。
50年ぶりのゼネスト
1979年1月22日、イギリス全土の公務員や公共セクターの労働者達が、「行動の日」と銘打った24時間ストを行った。
この日のゼネスト(general strike)はなんと、1926年以来最大となる巨大なものとなった。
ゼネストとは、業種や職種の垣根を越えて、様々な場所で同時に行われれる大規模ストだが、行動の日以降も多くの労働者がストを続行した。
そしてまた、大幅賃上げニュースが飛び交うに連れ、様々な業種で非公式ストも頻発しだした。
非公式ストというのは、労働組合の同意や支持を得ないストだ。
たとえば、救急車の運転手がストを開始したため、999をダイヤルしても救急車が来なくなる事態が発生した。
仕方がないので陸軍が、救急車業務を引き受けねばならなくなった。
また病院の補助スタッフもストライキを開始したため、2,300ある国営病院のうち1,100の病院では、緊急患者しか対処できなくなってしまった。
と言っても普通に動いている救急車は一台もなかったので、ほぼ休業状態になり、ガン患者の治療もストップしてしまった。
学校も給食のおばさんのストによって、休校に追い込まれた。
リバプールでは墓掘り人がストを始め、埋葬予定の死体がどんどん溜まっていった。
このまま1ヶ月ストが続くと、死体は海に捨てるしかない。
そんな記事が新聞をにぎわした。
ゴミ収集の作業員もストを開始したため、地方自治体は公営の公園をゴミ置き場にせざるを得なくなり、ロンドンのウエスト・エンドでは、ゴミが山のように積み上げられた。
ゴミの山は、ネズミを引き寄せたから、ロンドンの衛生状態は一気に悪化した。