ケインズ政策とは

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1979年5月3日、マーガレットは、ダウニング街10番地に到着した。

 

ダウニング街10番地とは、イギリス首相官邸の住所だ。

 

ダウニング街10番地で、マーガレットが最初に手をつけたのは、ケインズ政策からの脱却だった。

 

戦後、西側諸国ではケインズ政策によって、景気を下支えして失業率を抑えるという政策をとっていた。

 

労働党の政策も、実はケインズ的な政策であった。

 

ケインズ政策とは、ものすごく簡単に言うと、政府がお金を使うと景気が良くなり失業が減るというものだ。

 

20世紀初頭、イギリスの大量失業を目の前にしてケインズは考えた。

 

なぜにこんなに大量の失業者が街にあふれているのか?それは「モノが売れない」からだろう。

 

モノを作っても売れないから、投資をして生産を行っても儲からない。

 

よって投資はリスクが大きなモノになり、投資は減らざるをえない。

 

投資が減ると、新たな労働需要は生まれないし、既存の生産施設でも生産量が減っているので、労働需要は大きく減る。

 

これによって普通は賃金率調整が起こり、給料が下がる。

 

安い給料で働く必要がない労働者は自発的に失業を選ぶので、労働市場は表面上、均衡する(釣り合う)はずである。

 

ケインズ以前の経済学理論では、こうやって均衡点ができて調整が進むわけだが、現実には働きたくても仕事が得られない労働者(非自発的失業)が大量発生する。

 

理論上、完全雇用は可能なはずなのに、なぜそれが起こらないのか。

 

そこでケインズは、賃金の下方硬直性が問題だと考えた。

 

賃金の下方硬直性というのは、簡単に言うと、給料は下げるのが難しいということだ。

 


ケインズ政策の行き詰まり

現代社会では、不況になっても、従業員の給料は下げにくい。

 

新たに雇う場合は安い賃金で雇えるが倒産の危機でもなければ、既に雇っている労働者の給料を下げるのは難しい。

 

また労働者が団結したりそれを世論が後押ししたら、必要でない従業員も雇いつづけざるを得ないし、給料も下げられない。

 

となると企業は不況でも製造コストが下げられないので、新たに人を雇うことができなくなり、失業者数も均衡点よりはるかに多くなるわけだ。

 

その結果、失業者の数は増え、働きたくても働けない労働者が街にあふれると言うことが起こる。

 

そこでケインズは二つの対策を考えた。

 

まず投資を促進するために、利子率を下げる必要がある

 

というのも利子率が下がれば、投資しても儲かる可能性が高まるから、投資が増えるはず…ということだ。

 

そのため、景気が回復するまで中央銀行は証券類を買い入れ続ける必要がある。

 

(証券類の価格を下げない→金利が上がらない)一方、景気対策のために利子率を引き下げ続けると、利子で暮らしている階級は必然的に没落する。

 

モノが売れない時代は、投資によるリターンも少なくなるので、資本家や個人投資家は配当だけでは生活できなくなり没落する。

 

そうなると投資は政府や企業が主体となって行う時代に変わっていくはずで、投資における政府の重要性が増していくことになる。

 

つまり政府が財政によって投資を行い、景気を支える必要がある

 

金利を下げて企業が投資しやすい環境を作り、政府も財政支出によって投資を増やす。

 

ケインズ政策というのは簡単に言うと、これだけである。

 

そして実際、ケインズ政策は雇用対策として大きな効果があったので、西側諸国では戦後どの国もケインズ政策を採用した。

 

しかしだんだん無駄な財政投資が増え、それにぶら下がる人間が増えてしまい、政府や行政にぶら下がった人間が騒いで財政赤字を増やすと言う事態に陥ってしまった。

 

なのでマーガレットの仕事は、野放図に拡大したケインズ政策を止め、とにかくまずインフレを退治する事から始まった。


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