PCT制度とNHS改革の成果

PCT制度とNHS改革の成果

10年計画で、NHS改革

イギリスの国営医療サービスNHSは、70年代からサービスが悪化し始めた。

 

そしてサッチャー保守党政権下の80年代〜90年代には財政赤字削減で、医療関係予算も伸びが抑えられたため、先進国ではあり得ない低水準になってしまった。

 

医療予算抑制による賃金抑制で、医師や看護師などが私立病院に流出し、投資不足で医療設備は老朽化。

 

病院の衛生状態も悪くなり、院内感染事故も頻発した。

 

その結果、GP医(かかりつけ医)の予約も数日待ち、専門医による診療は半年以上待たされ、慢性病やガンの手術に至っては2年待ちになった。

 

救急医療も、999(日本で言うと119)をダイヤルしてから4時間以内に治療を受けられた人は75%に過ぎず、救急病院に搬入される前に命を失う患者も多く、大問題となった。

 

そこでサッチャー政権では、GP医や各種病院などをグループ化し、「NHSトラスト」と呼ばれる組織を編成して、自主運営させたが、状況は殆ど改善されなかった。

 

そこでブレア労働党政権では、保健医療予算を毎年7%程度ずつ増やし、医療費総額の対GDP比率をEU諸国の平均の9%台まで引き上げることを宣言し、10カ年計画の『NHSプラン』を2000年から実行した。

 

NHSプランは具体的には次のようなものだった。

 

  • 医療予算の増額、対GDP比をEU平均レベルまで引き上げ
  • 医療への国家基準を策定、医療サービスを評価するNICEの設立
  • 末端組織への権限移譲、医師以外の医療従事者の権限拡大→PCT
  • 医療機関の競争を促進。

     

    民間企業のトラスト病院などへの参入を促進

  • 公務員だったGP医を契約制に変更
  • ガン、心臓疾患、精神疾患の治療に対する政府目標を作成し、達成度を評価。

     



NHSプランの成果は概ね成功

NHSプランでは、緊急医療の迅速化と、診察待ち・手術待ち時間の短縮が焦点で、そのために様々な制度が新たに導入された。

 

まずPCTという地域医療担当組織を作り、PCTに大幅に権限移譲を行って、地域の状況に合わせた医療改革を行わせた。

 

また予約なしに診察が受けられるウオーク・イン・センターを設立したり、24時間体制の電話診療システムを作り、緊急に見てもらいたい患者の診療や相談を受け付けた。

 

さらに今までは病院で行っていた検査や処置の一部を、GP医でもできるように変更し、専門GP医制度を作った。

 

本当に病院で治療が必要な患者だけを病院に送るようにして、維持コストのかかる病院を整理統合した。

 

また海外から医師や看護婦を雇い入れて人手不足を解消し、民間病院のNHS参加や協力も促進して、待ち時間短縮を図った。

 

さらに病院の評価はNHSのホームページで確認できるようにした上で、GP医は、病院を紹介する際にも4〜5つの選択肢を提示し、患者はその中から病院を選ぶシステムに変更した。

 

これらのNHS改革の計画立案には、医師や医療関係者などの業界関係者を極力排除し、理想となる医療保健システムを考えた。

 

その結果、現場が混乱するという事も起こった。

 

ただ、医師や看護士の給料を引き上げたため、混乱はあったモノの概ねは受け入れられたNHSで手術を受けるには、半年以上待つのが普通であり、半年以上待つ待機患者が25万人もいたが、2004年には、半年以上待つ患者数を7万人まで減らせた。

 

救急医療も、999をダイヤルしてから4時間以内に治療を受けられた人は75%程度だったが、それを90%以上まで引き上げることに成功した。

 

ブレア労働党の医療サービス改革は、概ね成功したと言って良いだろう。

 

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