新しい女性の生き方を支持
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90年代後半、学校崩壊と教育の失敗が社会問題となった頃、家庭に対する見解は、保守党と労働党でハッキリ分かれた。
当時、政権の座にあった保守党は、離婚率が上がり、十代の母親が増えて、母子家庭が増えてしまったのは、労働党の補助金政策のせいだと主張した。
つまり手厚い福祉と家族手当が多すぎたために、イギリス女性は気軽に離婚という選択をし、母子家庭が増えたのだという主張だった。
保守党は、フェミニストに対しても、フェミニズムが青少年犯罪の増加に関係があると主張し、女性は家庭に入って育児に専念すべしと主張した。
一方、ブレア労働党は、従来の家庭イメージはすでに崩壊し、女性たちはもはや家庭に黙って留まらないものだと考えた。
家庭における教育の重要性は認めつつも、母子家庭や働く女性など、新しい女性の生き方に理解を示し、その上で教育を再構築する必要性を訴えた。
そして口先だけではなく女性候補を多数擁立し、働く女性を全面に押し出して総選挙に臨み、勝利を収めた。
古き良き家庭を取り戻そうとする保守党とは対照的にブレア労働党は、新しい家庭・新しい社会を築く事をアピールし、保守党に流れていた女性票の流れを逆転させ、若い女性を中心に票を集める事に成功したのだ。
定時に出勤すらできない労働者達
ブレア労働党は、福祉から就労へというスローガンを掲げ、働く女性を支援すべく、戻し税(税還付)の形式で児童手当や単親手当を給付した。
それと同時に、子育てをしながら学べるコースや、職業資格を取れるコースを新設した。
労働党は、様々な職業スキルを認定する職業資格を細かく定め、就職や転職に役立てようとした。
ブレア労働党にとっての福祉とは、あくまで働く人に対する支援であるため、働かない人や働く意志のない人には、手当てを支給しないと言う方針であった。
なので失業者であっても、半年以上失業し続けている場合には、職業資格取得のための職業訓練を受けなければ、それ以降、手当を支給しないことにした。
そうして実際に長期失業者に対する給付金付職業訓練コースを新しく立ち上げてみると、定時に出勤し、挨拶し、髪型や化粧や服装を正し、同僚と話ができるようなトレーニングから始めなければならず、このような訓練すらできていない失業者が、イギリスには山ほどいるという実態が明らかになった。
当時、イギリスには約100万人の失業者がいたのだが、求人も100万人以上分あって、求人倍率は1倍以上あった。
なので数週間も職業トレーニングを課せば、失業者の多くは、すぐにでも就業できるハズだったのだが、あまりにも失業者の仕事に就く意欲が低すぎて、どうにもならなかった。
ブレア政権は、このような未熟な労働者を、いかに働けるようにするか、方策を修正する必要に迫られた。