教育や福祉関連の予算も増やさない
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1997年5月、18年ぶりに政権の座に就いたブレア労働党。
43歳のブレア首相率いる労働党が、どのような政治を行うのかに注目が集まった。
ところがブレア新首相は、何もしなかった。
予算の大枠は変えず、サッチャー政権が目指した財政赤字改善路線を引き継いだ。
すなわち
- 国債は増やさない
- 教育や福祉関連の予算も増やさない
- 中央銀行の独立性を高め、政府は金融に介入しない
これは今までの労働党政権では、あり得ない慎重さであった。
かつては労働党が政権を取ると、直ちに年金を引き上げたり福祉予算をばらまいたり、基幹産業の国有化を行ったりというのが常であった。
しかしブレアは「増税とバラマキの党」というイメージを払拭し、最低でも2期以上、政権を担当することを大目標に据え、予算を増やさずにできる改革にのみ着手した。
労働党はもはやバラマキもしないし、基幹産業の国有化もしない。
さらには平和を実力で守る、…こう言った態度を国民に印象づけた。
もちろん改革の中には、労働者向けの政策もあり、減税も行った。
サッチャー政権では、産業振興のために6段階の累進課税制度(所得税)を2段階に簡略化し、法人税の最高税率も引き下げた。
しかしこれは、あまり所得税を負担していなかった低所得者層にとっては殆ど恩恵がないモノであった。
そこでブレア政権では、様々な控除項目を追加したり、子育て中の家庭や、片親家庭の負担を減らす仕組みを導入した。
これらは所得控除ではなく、税還付金として支給される形になっており、児童控除や片親控除、勤労控除などという名目で税金を還付した。
この制度では、納めた税金より還付金の方が多くなる場合も生じたが、「子育てをしている人」「働いている人」に対する支援策であり、『福祉から労働へ』のスローガンに沿ったものであった。
働いている人を補助する
ブレア労働党は、福祉に依存している人ではなく、働いている人を補助するという立場で、福祉制度を組み立てていた。
まず16歳以下の子供全てに児童手当を支給し、高校や職業訓練校に通う子供に対しても、児童手当を支給した。
金額は、子供二人で月2万6000円程度。
また子供を妊娠すると10万円を支給し、NHS(国民健康サービス)の施設を利用するなら分娩費は無料とした。
さらに子供が生まれたら、チャイルド・トラスト・ファンド(CTF)という口座が開設され、政府から250ポンドの小切手が振り込まれる制度も作った。
(現在は政府の給付は停止)この口座は、子供が18歳になるまでお金を引き出すことはできない口座で、親や保護者はこの口座にお金を振り込むことができる。
子供は18歳になったときに最大500万円のお金を、大学での学習資金や独立資金として受け取ることが可能になるという仕組みだ。
一方、求職者への補助金制度も新設された。
これは一定の収入以下の労働者が職を探す時に支給される制度で、職が見つかるまで様々な形で支援してもらえる制度だ。
さらに若者の長期失業を減らすために、若者向けの就労訓練プログラムも用意された。
これは約1年間に渡り、若者の職業訓練や資格取得などを援助し、民間企業や福祉サービス、ボランティア活動などを経験させて就業させるというプログラムだ。
また老若男女を問わず、職業訓練を修了した者には国家資格(認定資格)が与えられ、単純労働だけでなく、より高賃金の職に就けるような仕組みを整えた。