イギリスの伝統的地方財「レート税」とは?
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レート税(Rate tax)とは、イギリスの伝統的地方税である。
レート税は土地や建物にかかる固定資産税で居住用と非居住(事業用)の2種類があった。
居住レートとは住宅(部屋)に課税される税で、事業用レートとは事業を行うための土地や建物に課税される税金だ。
居住用レートには様々な減免措置があり、低所得者が住む小さな部屋には殆ど税金が課せられない。
なので結局、ちゃんとした家に住む熟練労働者以上の人と、お店や事業所(企業)が負担する税金になっている。
レート税は後に、居住用レート税が、コミュニティ・チャージ(人頭税)に変わった後、「カウンシル税」という名前になった。
また非居住(事業用)レートは地方税から国税になり、国が集めてそれをまた地方に分配するという仕組みに変わった。
これは自治体ごとに事業用レートが毎年変わると、外国企業などがイギリスに投資しにくくなるので、それを防ぐというのが大きな目的だ。
そして驚くべき事に、イギリスの地方税はなんとこのレート税一種類だけである。
地方税というのは、その地域で生活したり活動したりする人のために使う税金だから、住んでる家や使っている土地などの固定資産に課税するのが一番理に適っているというのがイギリスの考え方らしい。
そして地方独自の財政支出が増えると、その分、レート税率が上がる仕組みになっている。
ミリタント派、環境大臣から1500万ポンド、ふんだくる。
イギリスでは、地方自治体が独自の施策で支出を増やす場合、レート税率を上げて賄う仕組みである。
政府は毎年、地方自治体に対し、ターゲットという財政支出基準を示し、それを越える支出は全て、レート税で賄わなければならない。
そのために予算案ができる毎年度終わりには、次の年度のレート税率も決めねばならない。
なのでリバプール労働党(ミリタント派)は、税金を気前よくばらまいた分だけ、レート税率を上げねばならなくなった。
ミリタント達は何の財源のあてもないのに、公営住宅一戸当たり16ポンドを支給し、1200人の人員削減を止めて、さらに1000人を雇い入れたので、翌年のレート税率を、なんと150%以上も引き上げねばならなくなった。
レート税の計算基準は年間の家賃相当なので、150%というと、一年間の家賃の1.5倍もの金を、地方税として納めないといけなくなる。
これはさすがに無理だと考えたリバプール労働党は、政府や労働党に、財政支出削減目標の緩和を訴え、補助金の増額を嘆願するが、あまりにも虫がよい話だから拒否されてしまう。
特に最初に公営住宅の住民に16ポンドずつばらまいたのが悪評で、財政赤字削減を進めるサッチャー保守党のみならず、味方の労働党キノック党首にまで放漫財政を非難される有様。
そこでミリタント派は一計を案じ、環境大臣をマージー川周辺のマージーサイドに招いて劣悪な住宅環境を見せ、都市再開発五カ年計画の一部費用として1500万ポンド(250万ポンド×6年)の特別融資を引き出した。
これによって初年度のレート税率の増額は17%の引き上げで済んだのだが、ミリタント派はなんと翌年も、2,500万ポンドの借り入れを環境大臣に申し入れた。