農業生産が増え、人余りが生じる

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農業の生産性が上がると人口が増える。

 

人口が増えると経済が成長する。

 

単に豊作が続いただけであれば、その後に凶作になって人口はまた減るが、生産技術が上がった場合は増えた人口を養い続けられる。

 

そして人口が増えると、人余りが生じる。

 

農業の生産性が上がって人口が増えても、増えた人口より少ない人数で十分な生産ができるので、別に農業をやらなくても良い人間が増えるのだ。

 

農地の広さは限られているので、その農地を耕すのに必要な人員さえいればよい。

 

となると農業地区では、農業はやっているが、実は失業状態と同じという人間がたくさん生まれる。

 

農作業は手伝っているが、実は仕事をシェアしているだけ。

 

こういうのを経済学では「偽装失業」なんて呼ぶ。

 

偽装失業分の人員は、農地にいなくても構わないから、余分な人員は口減らしのため、町に奉公に出される。

 

商家に預けられて読み書きを学んだり、徒弟となって様々な技能を学んだりするわけだ。

 

上方落語の商家噺(はなし)などでは、丹波篠山から出てきて住み込みで店を手伝いながら、文字や算盤などを教わる丁稚(でっち)がでてくるが、ああいう制度は文明国にはたいていあるらしい。

 

ほんの150年ほど前、つまり19世紀中頃までは、イギリスでもドイツでもアメリカでも、学校教育というのは一般的ではなかったから、一般庶民が読み書き算盤を習うには、丁稚や徒弟となって働くというのが普通だったわけだ。

 



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キャラコの大ヒットが産業革命を生んだ。

農業の生産性が向上し、農業生産量が何倍にも増えると、人口も何倍にも増える。

 

ただし生産性が向上した農村では増えた人口ほど人手は要らないから人余りが生じる。

 

そこで農村から町に人間がドンドン出てきて様々な工業や商業が盛んになっていく。

 

そして18世紀初めのイギリスで、キャラコ(綿織物)が大流行したことがキッカケになり、綿織物を作るための様々な機械が考案され、その機械を動かす為の動力として蒸気機関(蒸気で動かすエンジン)が発達した。

 

これによって工業は手作業で作る家内制手工業から、動力と機械で作る工場制機械工業へと発展していく。

 

キャラコが貴族など上流階級だけのブームなら、機械化などは必要なかったはずだが、一般市民もキャラコを欲しがったために大量生産するための機械が発達した。

 

またコークス(石炭)を使った製鉄法が発明され、鉄がドンドン生産できるようになると、工業機械だけでなく、石炭で動く蒸気船や鉄道も建設されるようになって物流も活発になる。

 

工業製品はヨーロッパだけでなくインドなどの植民地にも輸出され、貿易の規模もドンドン大きくなって「世界の工場」と呼ばれるまでになる。

 

イギリス庶民の収入もドンドン増え、高価な輸入品であった紅茶や砂糖なども庶民の文化として定着した。

 

そうして大ロンドン(ロンドン市と周辺地域)の人口は、たった百年で86万人(1800年)から650万人(1900年)まで増えた。

 

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