教育改革 フィンランド式は役に立つか?記事一覧

教育改革が議論されるとき、よく出てくるのがフィンランドの教育だ。フィンランドとは北ヨーロッパの国で、人口540万人程度の小国である。国土面積は、33.8万平方キロメートルで日本よりやや小さく、人口は日本で言うと北海道くらいの規模の国だ。しかし一人当たりGDPは4万4000ドルで、これは日本の4万2000ドルよりも多い。(2010年のIMFデータ)国際競争力でも世界経済フォーラムのランキングでは、2...

学力世界一のフィンランド。実は1人当たりGDPも日本より多く、ダボス会議で有名な世界経済フォーラムでも国際競争力が2001年から4年連続で1位。つまり学力をとっても経済をとっても、日本より先を行くヨーロッパの国である。このフィンランドの教育がどのようなものか、興味津々であるが非常に全体像がわかりにくい。というのもフィンランドの教育について書かれた初期の本には美辞麗句ばかり踊っていてにわかには信じら...

フィンランド教育を理解するために、参考になったのが次の4冊の本だ。それぞれどのような本か、簡単に説明しておく。受けてみたフィンランドの教育この本は、日本からフィンランドの高校に1年間留学した日本人の女の子から見たフィンランドの教育事情。フィンランドの高校での教育の様子や、ホームステイ先の親や子供の本音が垣間見れる。また留学終了後、本書を書くために英語が話せるライターの母親と再びフィンランドへ渡って...

フィンランドの初等教育(小学校)は、7歳の8月から始まる。が、その前に6歳でまずプリスクールに行く。プリスクールとは小学校の準備段階で、子供が学校に通うための準備期間だ。プリスクールが設置されるのは、保育所または小学校の中で、小学校に通う予定の子供はまずここで学校生活に慣れさせるという仕組みである。日本で言えば幼稚園と言うことになるわけだが、フィンランドでは両親が共働きなのが普通で、保育所→プリス...

フィンランドの初等教育、小学校1~2年生では、フィンランド語の学習に時間をかける。3分の1から4割くらいの時間をかける。と言うのも実は、フィンランドではなんと義務教育で4カ国語も言語を学ぶのだ。大まかに言うと、小学校3~4年から英語。中学からは第二外国語を学ぶのだが、その他にどこかの学年でスウェーデン語も学ぶことになっている。フィンランド国民のほとんどはフィンランド語で生活するが、一部地域ではスウ...

フィンランドでは、新学年は8月の15日に始まる。ただし入学式はなく、すぐに授業が始まる。フィンランドの小学校の多くは、生徒数が100人未満で、クラスも2学年1クラスの複式学級だ。フィンランドには小学校、中学校の他に、小中が同居する総合学校というのがあるのだが、全国に約3400校ある小中学校のウチ、1700校が99人以下の小さな学校で、そのほとんどが小学校だという。フィンランドでは1クラス20~25...

フィンランドは、高負担・高福祉の国だ。所得税は20%以上の累進課税、消費税も23%と高率だが、学校の授業料や医療費は全て無料。義務教育期間であれば、給食も無料だし交通費も支給。教科書も無料だが文房具などもタダ。ただし教科書は学校の備品であり、毎年回収して3年くらい使う。つまりボロボロになるまで使う。というのもフィンランドの学校は、公立学校であっても独立採算制で、毎年新しい教科書を揃えるような余裕は...

フィンランドの教師は、給料が安いのにスキルが高い。その一つ目の理由は、教員資格を取るのが難しいことにある。教員資格を取るには教育学部などに5年以上通い、修士号を取ることが条件だが、教員養成コースに入学するのが難関。毎年約8000人の志願者があるが、教員養成コースに進めるのは数百人だけだ。さらに教員養成コースでは毎学年、数週間以上の教育実習が行われ、プロの教員になるためのトレーニングを積むし、教師に...

学力ナンバー1、経済の国際競争力ナンバー1のフィンランド。フィンランドの教育目的は、平等や公平な社会を作るためではない。実際、フィンランドは格差が拡大している国で、OECD(経済開発機構)加盟国データでも高所得者層と中間層の所得格差が広がっている数少ない国の一つだという。つまり平等や公平は、国民が協力して国を守るために必要だからであって、いわば国防のためなのだ。というのもフィンランドの歴史は、スウ...

フィンランドは輸出で発展した国であり、貿易に大きく依存する国だ。輸出÷GDPの値を貿易依存度(輸出依存度)というのだが、フィンランドの貿易依存度は、なんと25~35%だ。これは国の経済の4分の1から3分の1が、輸出関連事業と言うことで、日本の10~16%と比べるとはるかに大きい。いかにフィンランドが輸出に依存しているかってことだ。現在のフィンランドの経済構成は、電子産業が20%、重工業が20%、林...

東西冷戦の終結とソ連崩壊によって、対ソ連・ロシア貿易が激減し、ピンチに陥った90年代初頭のフィンランド。失業率は0%から16.6%となり、5人に1人が職を失うという状況。何しろフィンランドは輸出依存度が25~35%もあるという輸出依存国。そんな国で輸出が激減したからサア大変。しかし冷戦が終わってしまったことで、東西の狭間にあったメリットは消し飛んでしまったから、新たな国家戦略を再構築しないといけな...

東西冷戦終結後の新しい時代に対応するため2000年に憲法全面改正に踏み切ったフィンランド。2000年憲法の主な改訂は、児童取り扱いの平等男女の平等プライバシーの保護死刑の廃止情報アクセス権(情報公開)環境権表現の自由と児童保護規定永住外国人の地方参政権教育権(高校就学権)労働権および商業活動の権利兵役の義務と兵役忌避の権利緊急事態における基本権と自由の一時的制限環境保護の責任であった。これはフィン...

1991年のソ連崩壊で東側との優先的貿易が途絶え5人に1人が失業するという深刻な危機に陥ったフィンランド。新たなフィンランドの担い手を養成すべく、1995年に大きな教育改革に踏み切った。この教育改革を立案したのが、若干29歳で教育大臣となったオリベッカ・ヘイノネンだ。ヘイノネンは1991年に教育大臣顧問となり、1995年から1999年まで教育大臣を務めたのだが、1994年に新しい教育指導要領をまと...

1995年のフィンランド教育改革、国はナショナル・コア・カリキュラムという最低限の学習内容を定めた。それ以上の教育は、基礎自治体、すなわち一番住民に近い自治体が自由にやって良いという決まりにし、自治体の教育委員会や学校に大幅な裁量権を与えた。これによって学校や教師は、自分たちで学習カリキュラムを自由に編成し、教え方も自分たちで工夫してできるようになった。ただし財政難から教育予算はギリギリの水準まで...

本を読んで、エッセイや小論文を書く。これって実は相当レベルの高いことである。私なども10年ほど個別学習塾で小中学生を教えているが、小学生でこんな事ができる子供は滅多にいない。というのも日本の国語では、文章を読んで内容を読みとる練習が主で、まともに文章を書く練習はほとんどない。読書感想文や自由作文はあるが、案内状や依頼文などの、他人に何かを伝えるための文は滅多に書かない。だから中学生の英文和訳でも、...

暗記型の勉強から脱却し、多読と作文力で生徒を評価しだしたフィンランド。公用語であるフィンランド語とスウェーデン語、英語、第ニ外国語と4カ国語を学ぶフィンランドでは、語学学習に大きな時間を割くのはやむを得ない。これは遊びではなくて実用のためだから、仕方がないと言えば仕方がない。ただこの読解力重視がどうやら別の問題を引き起こしているらしい。というのも男性教員が足りず、数学や理科などを担当する教員が不足...

学力世界一と言われるフィンランド、その最大の特徴は、できない生徒が少ないこと。OECDが3年ごとに行っている15歳を対象とした国際学力テスト(PISA)では、レベル1以下の生徒の割合が低いことに、大きな関心が集まった。レベル1以下の生徒はOECDの平均では19%もいて、日本でも14%も存在するのだが、フィンランドではなんと8%しかいないのだ。国語読解力 習熟度別分布 PISA 2009年このレベル...

フィンランドの義務教育では、できない子供を減らす為の制度が色々ある。それがプリスクールと留年と補習と卒業延期だ。たとえば就学前教育の「プリスクール」。フィンランドでは小学校に入る前に1年間、プリスクール(プレスクール)に子供を通わせる。プリスクールは保育所や小学校で行われ、小学1~2年生と合同で体育をやったりする。ここで子供が学校に通えるほど成長しているかを見て、十分でなければ1年間、入学を見合わ...

できない子供を1人でも減らす。落ちこぼれを作らない。フィンランドの義務教育ではそのために、就学前教育就学延期(1年間)1日1時間の補習義務教育でも留年中学卒業延期(1年間)などの制度を設けた。テストも単純な知識を問うテストではなく、本を読んだり実験や観察からエッセイ・小論文を書かせてそれを評価するという形式に変えた。生徒20~25人くらいで1クラスを編成し、小学校では、ペーパーテストの点数ではなく...