タイム・イズ・マネー、
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産業革命以降の社会では、時間が非常に重要な要素になった。
それ以前の農耕社会では、時間が価値や富を生むとは思いつきもしなかったし、時間当たりで賃金を支払うなんて事はできなかった。
さらに大事なのが三つ目の「同時性」だ。
同時性とは簡単に言うと、みんなでタイミングを合わせるって事だ。
10時に待ち合わせしたなら、10時にみんな集まると効率的である。
みんな10時にその場所に行けば、すぐに次のことが始められる。
ところが誰か一人遅れてくると、他のメンバーはみんな時間を無駄にする。
一人が遅れてこなければ早く終わって帰れたのに、あるいは一人の遅刻のために、何かに間に合わなくなったり。
農業でも漁業でも、タイミングを合わせて作業しないと、効率が上がらないと言うことはよくあるが、それは非常に限られた作業だけだ。
だからこそ農耕社会では時間を守らない事が多いし、遅刻も平気だったりする。
●●時間とかいって、待ち合わせに何時間も遅れてくるのが普通というのは、農耕社会でなら許されるが、工業社会では許されない。
と言うのも工業社会では、時間が価値であるからだ。
学校や会社で遅刻を問題にするのは、工業社会では同時性が重要だからであり、それが社会全体に浸透した結果なのである。
同時性も富になる
また「同時性」がさらに富を大きくすることが分かった。
同時性というのは、簡単に言うと「タイミングを合わせる」ということで、農耕社会では、余り必要でなかった概念である。
しかし同時性は、1980年代まで、それほど重要視されてこなかった。
というのも欧米の大メーカーでは、原材料やエネルギーなどの資源をまず揃えてから生産する方式が一般的で、時間通りに間に合わせないといけないという意識は、薄かったのだ。
しかし80年代前半に絶好調だった日本に学べと日本式経営が注目され、トヨタの「JIT(ジット:ジャスト・イン・タイム)生産方式」別名「かんばん方式」が欧米で研究された結果、同時性が富を生むことがわかってきたという。
トヨタのJITとは「必要な物を、必要な時に、必要な量だけ生産する」ということで、在庫を最小限まで少なくする工夫である。
販売店から車の注文が工場に入ったら、それに基づいて翌日以降に製造する車の車種や数量を調整する。
車種や数量を決めたら、そのために必要な部品を部品会社に発注し、すぐに納品してもらう。
販売情報を関連会社で共有することによって、車を作る時間を短縮し、在庫を減らす。
これによって在庫の管理費用も大幅に削減できるし、売れない在庫を持つリスクも減らせる。
部品メーカーや下請けメーカーも、原材料さえ確保しておけば、最小限の在庫ですむようになるため、関連企業全体の付加価値も大きくなる。
トヨタが開発した生産方式は、1990年代にはアメリカの大企業にも広まり、コンピューターやインターネットの普及と相まって、さらに発展していった。