医療崩壊は、地方自治体の責任
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日本はただでさえ先進国の中で、医者が少ないのだという。
活動していない医師数を入れても人口千人当たり2.5人しかおらず、OECD加盟国平均の3人よりも少ない。
医療機関に従事している医師の人数は、2008年の統計で10万人当たり212.9人だから2.1人だ。
なのに80年代から医師過剰だと言って、医者の養成数を減らしたわけだから事態は深刻だ。
医療費抑制は社会の要請とは言え、質や量を減らせと言う要請ではない。
高齢化社会の到来は分かっていたことであるから、工夫しろと言うことである。
しかし医学部の定員を7%減らし、医師の既得権益を守った結果、医師の絶対的不足が生じるようになった。
そして供給不足になったために、医師は薄給の大学病院で働く必要がなくなり、また、激務である外科医や産科医を選択する必要もなくなった。
供給過剰であれば、多少条件が悪い職場でも働こうという人が現れるものだが、供給不足であれば、条件が良い職場にしか働き手は来ない。
経済学的には、ごく当り前の話である。
そうして外科医や産科医を志す医学生が減った上に、大学からこれらの医師がドンドン流出したもんだから、大学病院でも医師が足りなくなってきた。
そこで今まで地方の病院に派遣していた医師を、順次引き上げ始めたわけだ。
そうなると困ったのが、地方の病院や自治体である。
医者は西日本に多い
大学の付属病院では、研究のために各部門の診療を続けなければならない。
だからそれぞれの科の専門医師がいないでは済まされない。
特に外科や産科は、いつ急患が発生するか分からないので24時間体制で備える必要があり、医者の絶対数がどうしても必要だ。
なので大学では、地方の病院に派遣していた医師を引き上げ始めた。
そうなると困ったのが、地方の病院や地方自治体だ。
大学から医師が派遣されてくることをよいことに、医師養成や医師確保に力を入れず惰眠をむさぼっていたら、医師を引き上げられて、一気に経営が成り立たなくなっていった。
医療というのは極めて地域的なものであり、地元で可能な限りまかなわなければいけないものである。
だから古くから栄えた都市には医科大や薬科大があり、地域で医師や薬剤師を養成して確保する重要性を知っている。
厚生労働省の「我が国の保健統計」には、都道府県別の10万人当たり医師数というのが載っているが、これをみても、異常なくらい地域差が激しいことが分かる。
全国平均の10万人当たり医師数は、さっきも書いたが212.9人であるが、西日本では滋賀県を除き、ほとんどの都道府県が200人以上で250人以上いる都道府県も8都道府県もある。
ところが東日本でこれを上回っているのは、わずかに5都道府県のみだ。
北海道と東京、そして北陸三県(富山・石川・福井)だけである。
中でも千葉・埼玉・茨城は群を抜いて少なく160人以下である。
西日本では、ほとんどの都道府県の国公立大学に医学部があるのに対し、関東で医学部がある国公立大学は、東大・横浜市立大・千葉大・東京医科歯科大・筑波大・群馬大くらいだから、いかにも少ない感じだ。
医者はどこかで勝手に湧いて来るものではないのだから、地元でキチンと養成しないと、こういう事になるって事らしい。
ところが病院の経営悪化には、医師不足以外にも原因がある。
それは患者の医者離れが進んでいるってことだ。