工業社会で、時間と労働が結びつけられた
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産業革命後の工業社会のキーワードは、標準化・専門化・同時化・集中化そして規模の極大化だった。
標準化とは製品や部品の規格を決め、作業などの手順を定めることである。
これによって分業が進み、専門化が進んだ。
また手順が標準化されたことで、熟練者でなくてもスムーズに作業ができ、農村から出てきたばかりの労働者でも、短期間のトレーニングで仕事を受け持つことができるようになった。
手順の標準化というのは、簡単に言うとマニュアル化ってことだけど、マニュアル化は商品の生産だけではなく、医者の診療行為や裁判の進め方から、ファミレスやコンビニの営業まで及ぶことになった。
こうして工業社会では、作業が標準化され、そしてそれぞれに賃金が設定されることになった。
工業社会の特徴は、時間と賃金が結びつけられたことである。
労働者は職種と、時給や日給といった労働時間に比例する形で賃金を受け取る。
マニュアル通りに作業するのであれば、時間当たりの出来高も計算できるし、商品の売り上げもある程度予想できたので、労働報酬を時間割りで決めることができたわけだ。
それ以前の農耕社会では、時間と報酬が結びつくことはなかった。
まあそりゃそうだろう。
どれくらい収穫があるのか分からないのに、分け前が決められるわけがない。
決められるのは、分配時の割合くらいであって、分配できるのも金銭ではなく収穫物そのものだったわけだから。
工業社会・工業社会というのはつまり、時間というのが非常に大きな意味を持っているのである。
時間厳守は、産業革命以降にできた価値観
産業革命による工業化は、時間と金銭を結びつけた。
それ以前の農耕社会では報酬と言っても収穫を分配するだけであり、時間と報酬は、決して相関(比例)することはなかった。
しかし工業社会では時間当たりで労働の報酬が支払われ、資本も時間に比例する利息率で貸し出された。
Time is money.(時間は金なり)は、まさに工業社会の言葉だろう。
工業社会のキーワードは、標準化・専門化・同時化・集中化・規模の極大化だが、より根本的には、全てのことが時間と数量と金銭に結びつけられた…ってことが大きな変化って事になる。
たとえばアメリカの自動車会社は自動車の安全性(事故発生率)について、事故が起こった際の補償額をベースにして計算しているというウワサが立ったことがある。
安全レベルをいくつか設定して、それぞれで年間に何人が事故に遭い、支払う補償額がこれくらいになるだろうと計算して、それでも十分利益になるように、安全性のレベルを決めているというのだ。
技術的に可能な限り、事故発生率を下げる方向ではなく、人命をも金銭に換算して、安全性を下げれるだけ下げて儲けようという発想だ。
これはさすがに問題となって非難を浴びたようだが良くも悪くもこれが経済合理性であり、科学的というものである。
工業社会の特徴を一言で言うと、お金と時間によって全てが計られるような社会ってことになる。