消えた300兆円の謎
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90年代まで公共投資が不況に有効だったのは、公共投資すれば必ずGDPが増えたからだ。
経済成長に必要なのは投資と消費で、不況時には投資が不足するから、政府が積極的に公共投資に乗り出し、それによって経済が発展できた。
なのでバブル崩壊後の90年代後半には、散々公共投資にお金をつぎ込んだし、21世紀になってもデフレ脱却のためと称して財政出動が再三再四行われ、10年間で300兆円以上も借金が増えた。
国債及び借入金並びに政府保証債務現在高を見ても、2000年の522兆円、2005年の813兆円、2010年の919兆円と増えており21世紀になってから300兆円以上もの「投資」が行われたわけだ。
日本の投資に対する乗数効果は2.4倍だというから、10兆円ほど公共投資を増やしただけでも、GDPは24兆円ほど押し上げられるはず。
ところが期待されたほどの景気浮揚効果がなく、GDPは10年間の間、500兆円前後をウロウロしていて、全く増えていない。
この間、人口は殆ど増えも減りもしていないし、団塊の世代もまだ現役バリバリなのだから、どう考えても不思議な経済現象である。
原因として考えられるのは、企業に入ったお金が、バブル崩壊で不良債権を抱え込んでいた穴埋めに使われて、投資にも賃金にも反映されず、ただただ借金の返済に充てられたってこと。
これは90年代末の小渕政権の時の投資が消えた原因だとされているが、21世紀のケースには当てはまらないかも知れない。
公共投資は今や、穴の空いたバケツに水を入れてるだけ?
それから消費の量だけでなく、消費の質の変化も関係があるかも知れない。
日本やアメリカなど先進国のGDPは、個人消費が6割を占めるのだが、デフレ不況が90年代末から何年も続いたために、個人消費が、節約思考でディフェンシブ(防衛的)になったこと。
高齢化によってリタイアに近づいた団塊の世代が、老後に備えて消費を絞ったりすれば、当然GDPは減る。
そしてまた消費が低価格商品にシフトしたために、安い輸入品ばかり売れて、お金が海外に流れてでていったことも大きい。
乗数効果というのは、投資されたお金が国内の企業や労働者の収入になるからこそ生まれる。
収入が増えた国内企業や国内の労働者が、また別の国内企業からものを買うから1万円が5万円分、活躍するわけだ。
ところが増えた収入が再投資や消費に当てられず、借金の返済や外国の商品を買うために使われたら、効果はなくなってしまう。
バケツの中で水が回っているからこそ、公共投資は乗数効果を生む。
ところが公共投資で増やした消費が、輸入品購入に向かってしまうと穴がたくさん空いたバケツに水を注ぎ込んでいるようなもので、乗数効果が生まれないのももっともかも知れない。
だから300兆円も支出を増やしたのに、GDPが全く増えない…のか?しかしそれにしてもやはり、300兆円という金額はでかすぎる。
300兆円も国内に資金が投入されたのに、GDPがマイナスなんてあり得ん。
公共投資を新たな国債発行や増税でまかなった場合、金利が上昇して、民間の経済活動にブレーキがかかる(クラウディングアウト)ということもあるが、この間の金利は低くて企業活動を圧迫するほどでもなかったはずだ。
90年代末に、バブル崩壊で銀行が抱えていた不良債権の処理のために投入された公的資金は47兆円弱だというから、300兆円と言えばその6倍。
一体この300兆円は、どこへ行ったのだろう。