お金は臆病で、すぐに仲間のところに集まる
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情報社会は、ほんの数秒で数十兆円ものお金が移動する社会だ。
数週間もあれば、債券の保有者がそっくり入れ替わっているようなことも起こる。
だから日本国債の所有者が日本人や日本の組織だから国債は安全だというのは全くナンセンスな話である。
日本の機関投資家だって投資先が山ほどあれば、利回りの悪い国債から利回りのいい投資に資金を移すしまた事業が左前になってきたら現金化するために日本国債をたたき売ると言うこともすぐ起こる。
機関投資家は、サブプライムローン問題やリーマンショックの後遺症で、ハイリスクの投資は今のところ控えているが、健康保険組合だって年金機構だって、これからも支出が増える一方だから多少リスクが高くても利回りのいい投資に資金を移さざるを得ないのだ。
またその一方で、国債が売れなくなってきたら、政府は積極的に外国人投資家に国債を売り出すはずだから、国債の外国人保有比率は上がりこそすれ下がることはないだろう。
だから日本の国債の所有者が外国人ばかりになる日も、すぐにやってくるし、それに備えた体制をドンドン作っていかなければならない。
投資家というのは、とにかく利益に敏感で、過敏なくらい臆病でないとやっていけないから、儲かると分かった投資にはどっと資金を投入するし、少しでも怪しいところがあって損しそうであれば、さっさと資金を引き揚げて、より堅実な投資に振り向けるモノだと言うことを覚えておかないといけない。
実際、1997年のアジア通貨危機では、アジア諸国の通貨が実情より高く評価されており、しかも対ドル固定為替相場制を取っていたためにリスクが殆どないという状態だったから、ヘッジファンドはあらん限りの資金をつぎ込んで空売りに走った。
また2010年のユーロ危機・ユーロ安・ドル安・円高の際には、中国の投資ファンドが数兆円もの日本国債を買っていたことが発覚したが、国債や債権の持ち主など、あっと言う間に入れ替わるというのは、絶対に忘れてはいけない常識だ。
日本国債は円建てだから安全、というわけでもない。
日本国債が暴落しないという根拠としては、日本国債の殆どが円建てで発行されていると言うことがある。
円建て(えんだて)というのは、簡単に言うと、日本円で借金して日本円で返済する債権だと言うことだ。
たとえば9万円で売って10年後に10万円を返すという形になる。
だから償還期限が来れば1万円札を大量に刷って、それを渡してしまえばいい、と言うのが大雑把な根拠である。
アルゼンチンが国債の債務不履行宣言(デフォルト)を強いられたのは、アルゼンチンの国債がドル建てで発行されていたからである。
ドルで借金したモノだから、ドルで返す必要があったわけだが、貿易がふるわなくなったので、ドルが稼げずギブアップしたわけだ。
ギリシャやアイルランドのソブリン債や国債の問題も、自国通貨ではなくユーロ建てだから、返済能力を問われているわけだ。
では日本やアメリカのように、自国通貨建てで国債を発行している場合、国債は安全なのかというと、もちろん全然、安全ではない。
日本のGDPは約500兆円、債務残高は約900兆円。
GDP比約180%アメリカのGDPは約14.5兆ドル(2010)、1ドル83円なら1200兆円だが、アメリカの債務残高は11.5兆ドル、日本円で約950兆円。
GDP比約80%しかもどちらの債務残高も、まだ増え続けている状態だから、基本的に、これらの借金を完済することは当面不可能なのだ。
じゃあなぜ、アメリカの国債も日本の国債もAAAとかAAと格付けされて取引きされているのかというと、アメリカ・ドルや日本円に対する信用が、他の通貨よりあるってことだ。
お金というのは所詮、紙切れに信用がくっついただけのモノだから、信用されるかどうかだけで、こうやって取引きされているわけである。