農業の生産性が上がり、人余りが起こる
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ジャガイモやトマトの栽培がヨーロッパ全域に広まり、それによって飢饉のリスクが低くなったおかげで、農地利用にかなりの余裕ができた。
何しろジャガイモは小麦の3倍も収量が期待できて、しかも年2~3回収穫できるという作物なのだ。
日本にも江戸時代に伝わり、飢饉の際の非常食として多くの人命を救ってきた有り難い食べ物だ。
ただジャガイモも連作障害が発生しやすい作物で、同じ土地で続けて栽培し続けられない。
がしかし、もともと北部ヨーロッパでは、ほとんどの作物が連作できない環境だった。
というのも北部ヨーロッパというのは雨が少ないので、土中に水分が少なくて、3年に1回は作物が取れないのが普通だったのだ。
だから三圃式(さんぼしき)などといって、農地を三つに分け、一つで夏の穀物を作ったら次の年は冬の穀物、その次は家畜の放牧地にすると言うローテーションで栽培する。
要するに農地の三分の一は、常に休ませて地力を回復させる必要があるわけだ。
しかし同じローテーションでも3倍収量があれば、農作物の収穫量は3倍になる計算だ。
ジャガイモは小麦やトウモロコシと比べても、痩せた土地で育つので、地力をすり減らす度合いも多少少なくなり、それだけでも凄いことである。
農業革命で人口増加
さらにこのころには牧草としてクローバーが普及し始め、イギリスのノーフォークでは、カブなどの中耕作物をエサに家畜を舎飼い(しゃがい)する方法が編み出された。
クローバーというのは豆科の植物で、根っこのコブに住んでいる根粒菌により空気中の窒素を取り入れることができるタンパク質が豊富な牧草である。
なので痩せた土地でも育つし、しかも家畜を太らせることができる。
他にも同じ豆科のアルファルファ(ウマゴヤシ)も牧草として用いられたが、これらの発見で、かつて休耕せざるを得なかった農地で痩せた土地でもできるカブなどの飼料作物やクローバーなどの牧草を栽培しつつ、地力を回復させる事に成功したからさあ大変。
大麦・ライ麦 → クローバー → 小麦 → カブ・ジャガイモ・甜菜…というローテーションで土地を休ませなくてもすむようになりさらにクローバーやカブでより多くの家畜を飼えるようになった結果、乳製品や肉類の供給もドンドン増えた。
この農法を輪栽式(りんさいしき)あるいはノーフォーク農法と呼ぶが、同じ広さの土地でも農作物の収量が増え、育てられる家畜の量も増える一方になった。
さらに19世紀には化学者リービッヒによって、窒素・リン酸・カリウムが植物を育てる三大無機肥料であることが突き止められ、地力を補うための化学肥料によって、さらに農業生産は飛躍的に伸びた。
こういう風に農業の生産効率がドンドン良くなり、そして人口も爆発的に増え始めた。
その結果、大変なことが起こり始めた。
人余りである。