恐怖の信用収縮・信用収縮って何が怖い?
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産業社会では、信用創造の機能によって、少ない資金がたくさんの企業に融資されそれで産業が回っていく。
ただし無限に信用創造が起こると危険であるから、かつては「準備預金制度」を使って信用創造を制限し通貨供給量(マネーサプライ)をコントロールしていた。
準備預金制度は銀行などの金融機関が、預金の何%かを、支払準備金として日本銀行の当座預金口座に預ける制度だ。
現在は0.01%という超低率になっているが、0.01%いうと、1億円ほど日銀に預けたら1兆円弱貸し出せるって言う割合で、まあ凄いレバレッジ倍率だね。
100億円預金を集めて100回ほど貸し回すってことかな。
しかしレバレッジ倍率が高ければ高いほど、失敗したときのダメージはものすごくなる。
というのも貸し出している資金はバーチャルだが、融資が焦げ付いた場合、損金はリアルだから。
そして融資の焦げ付きが想定外に増え出すと、「信用収縮」が起こってしまう。
信用収縮というのは簡単に言うと、銀行がお金を貸せなくなることだ。
銀行などの金融機関は「貸したお金が返ってくる」という「信用」を元に、お金をドンドン貸し回っているわけだが、融資が焦げ付くと、すなわち貸した金が返ってこないことが「確定」してしまうと貸せる金がなくなってしまうってことだ。
それがなぜ問題かというと、たとえばたった1億円焦げ付いただけで、10億円とか100億円も貸出枠が減ってしまうってことだ。
信用収縮が始まると、黒字企業でも倒産する!
もちろん銀行も、ある程度の融資の焦げ付きに備えて、引当金を設定している。
貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)とは、そう言うときに備えた会計処理だ。
ところが想定外に融資が焦げ付き出すと、引当金以上の損金が出てしまい、貸出枠を圧迫し出すからさあ大変。
信用創造機能が逆回転し始める。
それが90年のバブル崩壊で実際に起こった。
政府が過激化する不動産投機熱をさますために土地取引に規制を行い、不動産会社がドンドン倒産し始めると、想定外に融資が焦げ付き始めた。
融資の担保として設定した不動産の価格もドンドン下がり、持ち合いをしていた株式の価格も下がって評価損がふくらみ始めた。
そしてタイミングが悪いことに、銀行にはBIS規制適用で、自己資本比率8%以上を維持しないと銀行業務ができなくなった。
このままでは銀行自体が潰れてしまうと言うことで、銀行は新たな融資を極力減らし、貸し出していた融資を引き上げ始めた。
そうなると困るのが中小企業で、受けていた融資は返せと迫られ始めた。
これを「貸しはがし」と呼ぶが、それで今度は不動産以外の企業も倒産し始めた。
さらに信用収縮は、赤字なんてない黒字の企業にまで及んだ。
黒字企業でも運転資金(当座の営業資金)を全て現金で持っているわけではない。
だから運転資金を「つなぎ融資」でまかなっていた場合、信用収縮で金が借りれなくなって、やはり黒字倒産したのだ。
そうして日本経済はバブルで踊っていた企業以外の企業も巻き込んで、デフレの悪循環(デフレ・スパイラル)に陥っていったわけである。