預金って窓口で引き出せるって知ってた?
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プロシューマ(生産消費者)が社会に提供するのがトフラーが「タダ飯」とよぶ経済的利益である。
近頃では、預貯金を引き出しに行くとき、銀行の窓口に行く人はほとんどいないだろう。
なぜなら今はキャッシュカードを使って駅やコンビニのATMを使うのが当り前だからだ。
しかし1960年生まれの私が子供だった頃には、預貯金を引き出すには郵便局や銀行へ行くしかなかった。
そして、いくら引き出すのか用紙に記入して届け印を押した上、窓口の行列に並んで、預金通帳と一緒に出すしかなかった。
窓口では紺色の制服に身を包んだお姉さんがそれを受け取り、お金の準備ができるまで座って待たされた。
「みちもとさま」と名前を呼ばれたら窓口に行き、自分の通帳と自分のお金を受け取って有り難く帰ったものだった。
それが1970年代頃から、銀行に預金引き出し用の機械がずらっと並びだして、預金の引き出しに窓口に行く必要がなくなった。
自動預金引き出し機に自分のキャッシュカードを挿し入れ、暗証番号と引き出したい金額を入力して、自分のお金を引き出すようになった。
引き出し専用だった機械も徐々に高機能化し、預け入れもできるようになり、さらに利便性を高めるために都市銀行や地方銀行がそれぞれネットワークを結んだために、他の銀行や金融機関のキャッシュカードも使えるようになった。
振り込みや、消費者金融の利用・返済もATMでできるようになり、駅の構内やスーパー、コンビニに当り前のようにATMが置かれるようになった。
一見、機械化されて便利になっただけのようなことのように思える話だが、トフラーはその背後に大きな変革があるのだと指摘する。
というのも消費者が提供する「タダ飯」が、企業活動に大きな役割を持つようになったというのだ。
消費者が企業に提供する「タダ飯」とは?
私が子供の頃、預貯金を引き出すには、銀行や郵便局に行って、申込用紙にハンコを押して、預金通帳と一緒に窓口に出さねばならなかった。
ところが今は、銀行でも駅でもコンビニでもATMにキャッシュカードを挿し入れて、暗証番号と金額を入力すれば、それでお金が引き出せるようになった。
これって実は、銀行や郵便局の従業員がやるべき仕事を、消費者でありユーザーである預金者自身にやらせているって事だよね、…と、トフラーは言う。
実際は、銀行に行って出金申込用紙に金額などを記入し、ハンコをついて通帳と一緒に窓口に出すという作業が、キャッシュカードを使ってボタンを押すだけに代わっただけだから、利用者である我々の作業が増えたわけではない。
今や銀行まで行かずとも、近くのコンビニや自宅で振り込みまでできるような時代になったわけだから、相当便利になった。
だがトフラーはこれを「消費者が企業にタダ飯を食わせている」と表現した。
本来は銀行の従業員がコンピューターを操作してやるべき仕事を、利用者である預金者に代わりに操作させることによって、銀行は大幅に人件費を削減できたはずだ。
その分、銀行が利益を得ている…というわけだ。
つまり銀行の利用者は、自らATMを操作することで、銀行にタダ飯を食わせてやっている、と言うんだね。
最近ではスーパーなどでも、セルフレジというモノが設置され、自分で商品のバーコードを機械に読み込ませてカードで決済することもできるようになったが、あれもチェッカーさん(レジを打つ従業員さん)の人件費を節約しているので、消費者がスーパーにタダ飯を食わせてやっているんだ、という。
もちろんトフラー自身、タダ飯に対して憤慨しているわけではない。
そうではなくて、このタダ飯の存在が大きな力を持ち始め、逆に企業活動や企業業績に大きな影響を与えているってことが、情報社会の大きな変化なんだというのだ。