3分診療が通用しない時代が来た
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増大する医療費を抑制するためには、二通りのアプローチがあるという。
一つ目は、標準治療方式だ。
これは治療を標準化して行う方法である。
疾病別に標準的な治療法を定め、それを患者さんに機械的に適用していく方法だ。
風邪なら風邪、胃潰瘍なら胃潰瘍、アトピーならアトピー、疾病別にやることを定め、それを順番に実行する。
要するに、医療のマニュアル化を細かいところまで行い、それによって効率的な診療を行うってわけだね。
しかしこの方式は、いかにも工業社会的で、情報社会に逆行するものだ。
医療費抑制のために、患者一人当たりの診療を数分でこなしていくっていうイメージだから、いわゆる3分診療ってヤツで、あまり評判は良くない。
しかも実際はなんと、患者一人当たりの診療時間は、ドンドン延びているという。
というのもパソコンとインターネットが普及したことによって、一般人でも医療情報を簡単に得ることが可能になったからだ。
特に専門医でないと知らないようなことですら、患者側が知っていたりするから、治療法を巡って30分以上も医者と患者が議論するようなこともあるらしい。
情報社会では、情報の非対称で儲けることは、もはやできないと以前書いたが、場合によっては患者の方が、医師より進んだ知識を持っているケースもドンドン増えている。
患者側にしてみれば、苦痛を取り除きたくて医者にかかっているわけだから、自分の病気や症状に関しての情報を集めて、解決策を捜すのは当然だ。
そうなると3分診療なんてやっている医者は閑古鳥が鳴くし、そう言う姿勢の病院は、経営が成り立たなくなる。
加速する医者離れ
パソコンとインターネットの普及によって、医者と患者の関係は劇的に変わってしまった。
医療は分業化と専門化によって大きく進歩したわけだが、それが逆に自分の専門外の知識に疎い医師を生むことになってしまった。
医者は、自分の専門外の病気の治療法については、古い知識しか持っていないことがあり、それ故、賢くなった患者を納得させることができず、診療時間は長くなる。
天下り的に治療法を押しつけ、3分診療で良しとする医師や病院は、ネット上の口コミなども手伝って、どんどん不人気になって閑古鳥が鳴くようになる。
一方、患者はと言うと、血圧計などの各種家庭用医療機器を購入し、検査キットを利用し、そして病院や医院ではなく薬局、整体やマッサージ、東洋医学などの代替医療で自分の抱える健康問題を解決しようとしている。
そしてもっと進んで、自分の健康を維持するためにサプリメントやエクササイズを利用し、積極的な健康維持に努めている。
ウィキペディアの代替医療の記事によると、アメリカでは、1990年には代替医療を利用する回数が従来医療を上回り、しかも学歴が高い人、収入の多い人、知識人層など時代を先導してゆくとされる人たちほど、代替療法のほうを評価し、積極的に利用しているという。
ラジオ体操の起源は、アメリカの生命保険会社が普及させたということだが、生命保険会社や医療保険会社など、顧客の健康が自社の利益になるような企業では、さらに顧客の健康増進のために、定期的な検査などを実施して顧客に疾病リスクを伝え、早期の対応を求めたりし始めるだろう。
そうやって人々や企業や保険会社がプロシューマ活動を熱心に行い始めると、医療費もドンドン減って行くし、人々は自分なりの健康を手に入れることができる。
もちろんその間に、多くの医者が廃業し、病院が潰れるだろうけれど。