モノが行き渡った経済で起こったこととは

同時性とリ・エンジニアリング

工業社会では「同時性」が富を増やす。

 

その直接の原因は、製造コストが削減できるからだ。

 

たとえば住宅を建てるとき、予定通り作業が進まないと、さらに完成は先に伸びることになる。

 

というのも水回りの工事や配線工事は、専門の業者がやる事が多いからだ。

 

こんなとき、今日できなかったから明日に順延しようとすると、「明日は別のところで仕事があるので次は数日後。

 

」なんて言われて、一週間も納期がずれたりする。

 

水回りの工事や配線工事が終わらないと、水道会社や電力会社の工事もできないし、内装工事の方もドンドン遅れていくので、さらに完成が遅れる。

 

遅れるバスは、さらに遅れる」というが、そうして無用のコストがかかっていく。

 

トヨタのJIT(ジャスト・イン・タイム)生産方式というのは、そう言う遅れを、可能な限り減らしていこうという生産方式であったわけだ。

 

トヨタの自動車生産に関わる生産主体が、みんなでタイミングを意識して上手く合わせる。

 

それによって、遅れによる損失が最小限に抑えられ、同じ労働投入量でも、より多くの利益を得ることができたわけだ。

 

一方、リ・エンジニアリングについても研究が進んだ。

 

リ・エンジニアリングとは、高度に専門分化された現代企業を、いかに効率よく経営していくかという学問・手法だ。

 

企業の組織や運営を、市場変化や経営状況に即して、常に再構築し作り直していく方法を論じたものである。

 

こういう事が論じられ、そして多くの企業で採用されていった背景には、欧米や日本で高度経済成長が終わり、「モノが売れなくなった」ということがあるだろう。

 



少品種大量生産から、多品種少量生産へ

工業化が進み、物資の生産が増えると、人々は競ってモノを買うようになる。

 

モノを持っている人は幸せそうに見えるし、逆に持っていない人は不幸に感じる。

 

物資がないときには、きれいな服を着たくても着られなかったし、食べたいモノがあっても食べることができなかった。

 

だから工業化による大量生産で物資が手にはいるようになったら、みんな競ってそれを手に入れたわけだ。

 

こう言う時代には、とにかく商品をたくさん作って在庫しておけば売れるので、なるだけ大量の資源を投入して、大きな工場でたくさん作る方法を考えればよかった。

 

産業革命・工業化のキーワードは、標準化・専門化・同時化・集中化・規模の極大化だが、規模の極大化というのは、モノをドンドン作っても売れた時代に大いに有効だったのだ。

 

ところが買いが一巡して、欲しい人が欲しいモノをすでに買ってしまった状態では、大量生産されたものは、「コモディティ」、いわゆる「ありふれたもの」になってしまい、価値があるものとは見なされなくなって、売れなくなってしまった。

 

そして売れるのはコモディティではなく、顧客の収入やニーズにあった商品や適度にカスタマイズされた「マス・カスタマイズド製品」と言う時代になった。

 

小さな車が欲しい、燃費のよい車が欲しい、とにかく安全な車が欲しい、スポーツカーが欲しい、キャンプなどにも使える車が欲しい… 顧客のニーズは様々だし、同じ車種の自動車でも、車体の色やシートのタイプ、内装など、様々なバリエーションから選択されるようになった。

 

そうして製造業は総じて「少品種・大量生産」から「多品種・少量生産」へと舵を切らざるを得なくなり、それと同時に「同時性」を最重要視しなければならなくなったわけである。

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