サッチャーの教育改革

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サッチャー政権下では教育改革も行われた。

 

その主な内容は、

  • 全国カリキュラム策定、全国学力試験の実施
  • カリキュラム審議会による学習到達目標の設定
  • 入学定員の自由化と生徒数に応じた予算配分
  • 公立学校の国庫助成校への移行促進
  • 内ロンドン教育局の廃止
  • 都市工業高等専門学校の設置
というものだった。

 

イギリスの学校は、歴史が長いだけあって、種類も様々だし、年限も様々だった。

 

たとえばオックスフォード大学などは800年も歴史があるし、その後できた学校も、それぞれ数百年の歴史を誇る。

 

なのでそれぞれの学校が独自のカリキュラムで教育を行い、サッチャー改革前まで全国共通の教育カリキュラムがなかったのだ。

 

しかしそれでは学校教育が上手くいっているかどうか、何を改善すべきか全く判断のしようがない。

 

そこでサッチャーは、全国統一のカリキュラムを作成し、7歳・11歳・14歳・16歳児に対して全国一斉学力試験を行った。

 

さらにその学力試験の結果に基づいて学校番付を作成し、番付を4ランクに分けて全国紙で発表するようにした。

 

また学校定員を自由化し、学区制も廃して、親が子供を通わせる学校を自由に選択できるようにし、予算は生徒数によって配分するようにした。

 

これは教育に市場原理を導入する試みで、学校番付や学校の評判が悪いと生徒が集まらなくなり、教員の仕事や働き口が減るという仕組みである。

 

これによって学校や教員に強い学力アップへのインセンティブを与え国民の教育水準を上げようとしたわけだ。

 

さらに義務教育機関の予算編成権や職員の任免権を、政治に影響されやすい地方教育局から学校に移した。

 

また理科系教育や高度技術者養成のための学校を作り、科学振興を図った。

 


教育の市場原理導入と、学校の荒廃

GCSE試験とは、中等教育修了時の16歳で受験する全国一斉学力テストだ。

 

、科目は35科目以上もあり、ビジネスや音楽、美術、デザイン工芸、コンピューターなどもある。

 

評価は8段階でA'からGまで、上4段階が合格レベルになっている。

 

サッチャー改革では、学校番付を作る際にGCSE試験の合格率を学校の評価として採用したため、子供を通わせる親は、自分の地元の学校の評価を注視した。

 

また大学進学希望者は別にAランク試験というのも受けるのだが、その評価も学校評価の材料にした。

 

これらの評価がよければ入学希望者数が増え、予算も増えるので、学校側も学力アップに力を注いで、学校間競争が激しくなった。

 

教育に市場原理を導入して学力アップを図るという目的は、これによって多少達成されることになったが、問題も出てきた。

 

というのも学校側は試験の合格率を上げるために、できる子供とボーダーラインに近い生徒の学力アップに力を入れ、それより下位の生徒の教育には手を抜いたのだ。

 

成績が悪すぎる生徒に対しては受験を控えさせたり、受験科目を制限するようなことも起こった。

 

また試験に関係ない躾(しつけ)や社会道徳なども、軽んじられた。

 

90年代後半には、校内暴力、イジメ、自殺、十代の妊娠、など学校の荒廃が問題になった。

 

保守党議員の汚職やいかがわしい事件が頻繁に報道されており、大人の振るまいが子供の道徳心を失わせているという批判が起こった。

 

また難民や非英国人の子弟が通うセント・ジョージ校の校長が刺殺され、また小さな村のダンブレインという小学校に精神錯乱者が侵入して銃を乱射して16人の児童と教師1人が射殺されるという事件が発生した。


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