バーナード・クリックの『デモクラシー』を読む
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情報社会時代の民主主義。
ここからはイギリスの政治学者であるバーナード・クリックの『デモクラシー』という書物から、民主主義の理屈を学ぶことにする。
因みにこの本は、2002年にオックスフォード大学出版局から出版されたDemocracy: A Very Short Introduction(デモクラシー、とても短い入門書)というもので、ソ連や東欧の共産主義国崩壊後、10年以上たってからまとめられたものだ。
ソ連崩壊後に書かれたデモクラシーの書籍としては、アメリカの政治学者ロバート・ダールの著した「デモクラシーとは何か」という本もあるのだが、まずは議会制民主主義の本家の方から読んでいくことにする。
因みに著者のバーナード・クリックはロンドン大学名誉教授であり、労働党のブレア政権下ではシティズンシップ教育に関する委員会の委員長を務め、成文憲法制定を求める「憲章88運動」に関わるなど、2008年に没するまで積極的に政治に関わったイギリス政治学の重鎮だという。
その重鎮の書くデモクラシーの入門書、最初から我々を迷路に迷い込ませる。
というのもなんと「デモクラシーとは何にでもくっつくレトリックかも知れない」というのだ。
レトリックというのは「言葉の飾り」であり、中身のない言葉。
つまりデモクラシーというのは、中身がないきれいなだけの言葉だってことか?
デモクラシーとは、単なる言葉の飾り?
バーナード・クリックの『デモクラシー』を読む。
クリックによると、デモクラシーというのは何にでもくっつく『レトリック』(言葉の飾り)のようなものかも知れないと言う。
というのも20世紀の軍事独裁政権は、多くが「●●デモクラシー」を唱えて、軍事独裁の正統性を主張したという。
また20世紀初頭に誕生した共産主義国は、「新民主主義革命」を唱えて国家統治を行った。
しかし彼らの統治がデモクラシーであったかどうかはソ連や東欧の共産主義国が崩壊した結果、西側諸国にあるようなデモクラシーと呼べるようなものではなかった。
ではなぜ彼らは「デモクラシー」という言葉を使えたのか?それはデモクラシーに厳密な定義もないし、何と何と何があればデモクラシーになるのかという、デモクラシーの設計図のようなモノがないかららしい。
だからデモクラシーを「人民による統治」と捉え、権力者が王侯貴族出身でなければ、それだけでデモクラシーと叫ぶことが出来たというわけだ。
だがしかし、このサイトの最初の方でも述べているが、国王や皇帝もデモクラシーが流行する何百年も前からすでに議員による選挙によって選ばれている。
ローマ王国などでも統治者は選挙で選ばれ、しかもそれはローマ市民ですらない者が王位に就いていたりして、じゃあそれだったらそれもデモクラシーかも?結局デモクラシーというのはこんな風に、どうとでもとれるような玉虫色のモノだったのだ。