ケインズ主義的社会民主主義

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60年代までの労働党右派勢力は、ケインズ主義的な社会主義を唱えていた。

 

ケインズ主義的社会民主主義とは、労働運動の発展と、民主主義的政治、そして経済への国家介入システムにより、資本主義の矛盾は解決されると言うものだ。

 

国家が積極的に経済に介入することで恐慌や貧困、さらに失業問題は解決され、さらに民主主義の進展によって福祉国家を作ることができるという主張である。

 

実際、ケインズ的政策で戦後復興は進み、しばらくの間は経済も順調に成長していたため、労働党を代表する政策になっていた。

 

また総選挙での得票率もずっと40%台を保っていたので、与党の保守党の政治に問題があれば直ちに政権を担当できる状態であった。

 

一方、長期政権となっていた保守党は、閣僚が高齢化し、タガが緩んでスキャンダルが相次いでいた。

 

老害が目立ち始めた保守党に愛想を尽かした国民の支持を受け、若き党首ハロルド・ウィルソン率いる労働党は、1964年に13年ぶりに政権を奪還した。

 

当時の労働党は左派を中心に世代交代が進んで、ウィルソンはそのホープとして絶大な人気を誇っていたのだ。

 

そうして党首のウィルソンが首相に就任したわけだが、48歳という若さの首相就任は当時の最年少記録だった。

 

イギリスの有権者は労働党の政策を支持したと言うより、若くフレッシュなウィルソンに期待したと言うことらしいね。

 


社会主義のジレンマ コスト・アップ・インフレ

48歳の若さでイギリス首相に就任した労働党のハロルド・ウィルソン。

 

ウィルソンはオックスフォード大学出身で、21歳でオックスフォード大学の経済学の講師を務めるほどの経済通であり若くして才能を発揮した有能な人物だったらしい。

 

ウィルソンは国民的人気を背景に、1966年に解散総選挙を行い安定議席を獲得する。

 

しかしこの頃から徐々に社会主義のジレンマが表面化し、労働党政権を苦しめ始めることになる。

 

労働組合の組織化が進み、交渉力を持った労働組合は、時間短縮や賃金アップなどの待遇改善をどんどん勝ち取ることができるようになったのだが、今度はそれがイギリス経済の足枷となっていったのだ。

 

というのも労働組合の賃上げがコスト・プッシュ・インフレを招き、イギリス製品は国際競争力を失い始めたのだ。

 

コスト・プッシュ・インフレとは生産コストが原因のインフレのことで、原材料費やエネルギー価格、人件費や金利などの上昇で、モノの値段が上がるタイプのインフレだ。

 

労働組合の力が強くなりすぎたイギリスでは、労働組合が毎年のようにストを決行して、そのたびに賃金アップを勝ち取った。

 

そしてイギリスの基幹産業の多くは戦後国有化されていたから、賃金アップは石炭などの値上げとなって庶民の生活に響いた。

 

そしてそのために他の企業の労働者も賃金アップを狙ってストを始めどんどんモノの価格が上がっていったのだ。

 

日本ではバブル崩壊以降の20年間、デフレ基調だったので、コスト・プッシュ・インフレと言っても今の若い人にはピンとこないかも知れないが、私が子供の頃に国鉄(JR)の労組は毎年春闘(スト)をやっていて、国鉄の労組が賃金引き上げを勝ち取った半年後には、国鉄の運賃が必ず上がったもんだったんだよね。

 

そして国鉄が運賃を引き上げると他の企業のコストを押し上げて、それが製品価格に転嫁されて物価が上がり、翌年にはまた国鉄の労組が春闘で自分たちの給料を上げ、それが国鉄の運賃引き上げにつながりという、際限のないインフレの連鎖が続いていったわけだ。


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