公共投資によって需要を喚起するケインズ政策が注目された大きな理由は、
投資によって
乗数効果が生まれることを示したからだ。
乗数効果とは、金融でいう信用創造のような話である。
たとえば公共投資によって失業していた労働者が仕事に就いたとする。
そうすると、その労働者は受け取った賃金の一部を消費に回す。
収入が増えたのだから、その増えた収入のウチから何かを買って消費する。
そうすると、その分だけ需要が増えるので、また仕事が増えて、
新たな収入が発生し、そのなかからまた何割かが消費に回って需要が増す。
この繰り返しによって、最初に100億円だけ公共投資を行えば、
結果的に200億円や300億円と言ったように数倍の需要が増える計算になるのだ。
最初に投入した資本の何倍もの需要が生まれるので乗数効果と呼ぶのだが、
何倍になるかは「
限界消費性向」(げんかいしょうひせいこう)によって決まってくる。
限界消費性向というのは、1万円収入が増えたときに、
そのうちどのくらいの割合が消費に回るかという値である。
たとえば1万円収入が増えたとき、8千円を消費に回すとすれば、
10,000円×0.8=8,000円
8,000円×0.8=6,400円
6,400円×0.8=5,120円 …
と言う風にお金が世間に回っていき、この無限級数の和を計算をすれば
結果的に最初の5倍の5万円分需要が生まれることになる。
限界消費性向が0.6なら乗数効果は2.5倍、0.5なら2倍であるが、
丹羽春喜氏の計算によると、1970年から2000年の間の日本経済の乗数効果は、
実質で2.4から2.5で安定しているというので
日本の消費者の限界消費性向は0.6ってことになるわけだね。
そうすると、2000年以降に平均30兆円ずつ増えた国の借金の乗数効果で
GDPが75兆円分増えていてもおかしくないんだけれど、そうならなかったわけだ。
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